2027年度の介護報酬改定に向けた議論が、いよいよ本格化しています。
介護報酬は原則3年ごとに見直され、直近では2024年度に改定が行われました。2026年度には介護職員等処遇改善加算を中心とした臨時的な見直しも行われていますが、訪問リハビリや在宅介護サービス全体の方向性に大きく関わる次の本格改定は、2027年度改定です。
この改定は医療・介護の現場に直接影響を与えるだけでなく、「保険の外側」で働くことを検討している専門職にとっても、大きな判断材料になります。このブログを読んでいる方の多くは、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・看護師・介護福祉士として、現在も保険内の業務に携わりながら、介護タクシーや自費の高齢者支援サービスによる起業を視野に入れているのではないでしょうか。
今回は、2027年度介護報酬改定に向けた議論の流れを整理しながら、訪問リハビリおよび介護タクシーの領域にどのような影響が出る可能性があるのかを考えます。制度の変化を「脅威」ではなく、「保険外サービスの役割を考えるきっかけ」として読み解くヒントになれば幸いです。
2027年度介護報酬改定とは何か

介護報酬改定とは、介護保険サービスの公定価格、つまり報酬単価や算定要件を国が見直すものです。通常は3年ごとに実施され、介護保険サービスの運営に大きな影響を与えます。
2024年度に改定が行われたばかりですが、すでに厚生労働省の社会保障審議会・介護給付費分科会では、2027年度改定に向けた議論が進んでいます。現在の議論では、以下のような方向性が重要なテーマになっています。
- 地域包括ケアのさらなる推進
- 在宅生活を支えるサービスの充実
- リハビリテーション・口腔・栄養の一体的な取り組み
- 自立支援・重度化防止の推進
- 介護人材の確保と処遇改善
- テクノロジー活用の推進
- 給付費の適正化と財政的持続可能性の確保
特に注目したいのが、「リハビリテーション・機能訓練・口腔・栄養の一体的な取り組み」と「自立支援・重度化防止」の流れです。これは訪問リハビリに直接関わる視点であり、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士などの専門職にとって、今後の働き方を考えるうえで見逃せないポイントです。
訪問リハビリへの影響:何が変わりうるのか

医療・介護の連携強化がさらに進む
2024年度改定でも、訪問リハビリにおける医師との連携やリハビリテーション計画の位置づけは重視されてきました。2027年度改定に向けても、医師の関与、多職種連携、記録や評価のあり方について、さらに整理されていく可能性があります。
現場でよくあるのが、「訪問リハビリをやりたいが、医師との連携体制を整えるのが難しい」という声です。特に個人で訪問リハビリのようなサービスを提供しようと考えた場合、保険内の訪問リハビリは医師の指示や事業所の指定、介護保険上の運営基準などが前提になります。そのため、医療機関や介護保険制度との関係構築は避けて通れません。今後、連携や評価の基準がさらに明確化されれば、保険内サービスとしての訪問リハビリはより制度に沿った運営が求められるようになると考えられます。
「卒業・目標達成型」リハビリの流れは続く可能性がある
近年の改定で明確になっている流れとして、「リハビリは漫然と長く続けるものではなく、目標を設定し、評価し、必要に応じて終了や移行を考えるもの」という考え方があります。訪問リハビリにおいても、目標設定、定期的な評価、リハビリテーション会議、多職種連携などが重視されています。
この流れは、訪問リハビリの終了後に「自費の維持期リハビリ」や「自費の生活支援サービス」へつながる需要を生む可能性があります。保険リハビリが終了した後も、「体を動かし続けたい」「外出をサポートしてほしい」「自宅での生活をもう少し安定させたい」というニーズは一定程度存在します。そのような場面で保険サービスでは対応しきれない部分を自費サービスとして支える役割は、今後ますます重要になっていくかもしれません。
リハビリ専門職の「生活支援」への関与が期待される
これからのリハビリ専門職には、単に筋力や関節可動域を見るだけではなく、その人の生活全体を支える視点がより求められていくと考えられます。外出支援、移動介助、買い物、通院、社会参加、家の中での動作確認など、生活の場面にはリハビリの視点が活きる場面がたくさんあります。
ここで自然に浮かぶのが、「介護タクシー+自費リハビリ」や「介護タクシー+暮らし支援」の組み合わせです。車への乗降介助、移動中の身体的サポート、目的地での動作介助、外出先での転倒リスクの確認など、専門職としての知識がそのまま活かせる領域です。
介護タクシーへの影響:制度の外側だからこそ見えてくること

介護タクシーは介護報酬改定の直接的な対象ではない
まず前提として整理しておきたいのが、介護タクシーは介護報酬改定の直接的な対象ではないという点です。いわゆる介護タクシーは、道路運送法上は「一般乗用旅客自動車運送事業(福祉輸送事業限定)」などとして扱われる運送事業です。所管は主に国土交通省・運輸局であり、介護保険サービスそのものではありません。そのため、介護報酬改定によって介護タクシーの運賃やサービス単価が直接変わるわけではありません。
ただし、訪問介護事業者が提供する「通院等乗降介助」は介護保険の対象となるサービスであり、こちらは介護報酬の影響を受けます。つまり、同じように「通院の送迎」に見えても、介護タクシー事業者が自費で提供する送迎と、訪問介護事業者が介護保険で提供する通院等乗降介助では、制度上の位置づけが異なります。ここは利用者にも事業者にも混同されやすい部分なので、開業を考える人ほど整理しておく必要があります。
保険外の移動支援ニーズは残り続ける
介護保険の通院等乗降介助は、算定要件や利用条件が細かく定められています。そのため、現場では「困っているのに保険サービスでは対応しにくい」という場面が少なくありません。たとえば、以下のようなケースです。
- 病院以外の目的地へ行きたい
- 買い物や外食、お墓参りに行きたい
- 要介護認定を受けていないが、移動に不安がある
- 家族の都合に合わせた時間で通院したい
- 通院後に買い物や用事も済ませたい
- 病院内の付き添いまで頼みたい
こうした制度の隙間を埋めるのが、自費の介護タクシーや自費の外出支援サービスです。報酬改定によって保険サービスの要件や運用が複雑になるほど、「自費でいいから柔軟に対応してほしい」というニーズが見えやすくなる可能性があります。
高齢化の進行と移動支援の必要性
2025年には「団塊の世代」が全員75歳以上となり、後期高齢者人口の増加が医療・介護・移動支援の課題をさらに押し上げています。免許返納後の移動手段、通院困難者の増加、独居高齢者の外出支援、家族介護者の負担軽減など、移動に関する社会課題は今後も大きなテーマであり続けます。
介護報酬改定がどのような内容であれ、「移動したい」「外に出たい」「病院に行きたい」「家族だけでは付き添えない」というニーズそのものがなくなるわけではありません。むしろ、制度では対応しきれない生活上の困りごとに対して、民間の自費サービスが担える役割は今後も残り続けると考えられます。
開業を考えている専門職が今、感じやすい不安
「制度が変わったら事業が成り立たなくなるのでは?」
保険サービスに依存した事業モデルであれば、改定のたびに経営が揺らぐリスクがあります。一方で、自費の介護タクシーや自費の生活支援サービスは、介護報酬改定の直接的な影響を受けにくい事業です。もちろん、物価上昇、人件費、燃料費、地域の競合、利用者の支払い能力などの影響は受けます。しかし、介護報酬の単価に収益を左右されにくいという点では、制度に依存しすぎない事業モデルを持つことは強みになります。
「訪問リハビリの需要が減るのでは?」
保険内の訪問リハビリは、目標設定や評価、終了・移行の視点が今後も重視される可能性があります。これは、長期的に漫然と訪問リハビリを続ける形には影響するかもしれません。ただし、それは必ずしもリハビリ専門職の役割が小さくなるという意味ではありません。
保険リハビリが終了した後も、生活を維持したい人、外出を続けたい人、転倒予防や活動量の維持を望む人はいます。そのような方に対して、自費のリハビリ、暮らし支援、外出支援、介護タクシーを組み合わせて関わることができれば、保険リハビリの「出口」として新しい役割を持てる可能性があります。
「介護タクシーの開業手続きが複雑で、何から始めればいいかわからない」
介護タクシーは運輸局への申請が必要で、書類の種類も多く、初めて挑戦する専門職にとってはとっつきにくい印象があります。よくある悩みとして、何の書類が必要かわからない、運賃設定の考え方がわからない、車庫や営業所の条件がわからない、行政書士に頼むと費用が高くて悩む、一度作った書類を何度も修正することになる、といったものが挙げられます。
申請に必要な書類の種類、記載内容、提出順序などを整理することが、まず最初のステップになります。現在、実際に介護タクシーを開業した理学療法士の経験をもとに開発されたWebアプリ「カイタク」が、ベータ版の配布を行っています。書類リストの自動生成やAIによる不備チェックなど、独力での申請準備をサポートする機能が実装されており、開業前の準備に活用できます。
「一人で起業して孤立しないか不安」
個人事業主としての起業は、自由度が高い反面、相談相手がいない孤独感を感じやすいものです。「これは正しいやり方なのか」「他の人はどうしているのか」「価格設定はこれでいいのか」「契約書や広告の作り方はこれでいいのか」「確定申告や会計処理はどうすればいいのか」といった悩みは、一人で抱え込むと大きな不安になります。確定申告、契約書の整備、広告素材の準備、運輸局への申請、開業後の集客など、起業後も実務的な課題は続きます。同じ立場の専門職とつながれる環境があるかどうかは、事業を続けていくうえで大きな支えになります。
改定を「追い風」にするための考え方
2027年度介護報酬改定に向けた議論を見ていくと、保険サービスの質向上、自立支援と重度化防止、在宅生活の継続支援、多職種連携の強化、専門職による生活支援への関与、給付費の適正化といった軸が見えてきます。これらは一見すると保険内サービスの運営ルールが厳しくなる話に見えるかもしれません。しかし見方を変えれば、医療介護専門職が「保険の外側」で地域に関わる意味が大きくなる流れとも考えられます。
制度が整備される一方で、制度の対象になりにくい生活上の困りごとも残ります。
- 病院には行けても、買い物には行けない。
- リハビリは終了したけれど、体を動かす機会がなくなった。
- デイサービスには行っているけれど、本当は外出や趣味活動も続けたい。
- 家族だけでは通院や外出の付き添いが難しい。
こうしたニーズに対して、専門的な知識と現場経験を持った人が関わることには大きな意味があります。介護タクシーと自費支援サービスの組み合わせは、一人の事業者が「移動」「生活支援」「身体機能の維持」をトータルに支えられる形です。利用者にとっての「顔の見える専門家」として地域に根ざすことは、制度改定があっても揺らぎにくい事業基盤につながります。
まとめ:制度変化をどう受け取るか
2027年度介護報酬改定に向けて、訪問リハビリの運営ルールや評価のあり方には一定の影響が出る可能性があります。一方で、介護タクシーは介護報酬改定の直接的な影響範囲外にあります。ただし、介護保険サービスの運用が整理されるほど、制度では対応しきれない移動支援・外出支援・生活支援のニーズも見えやすくなります。
「いま起業するのは早いのか、遅いのか」という問いに、ひとつの正解はありません。ただ、高齢化の進行と移動・生活支援ニーズの拡大という大きな流れは、今後も続いていくと考えられます。制度の動向を追いながら、自分の専門性をどう地域で活かすかを考えるタイミングとして、今はとても重要な時期です。
医療介護専門職として個人で在宅支援や介護タクシーの起業を考えている方に向けた、起業支援コミュニティ「ねっと」があります。高齢化率が高い地域で生まれた「暮らし支援サービスねっと」が運営するクローズドなオンラインサロンで、実務で使える契約書ひな形や広告素材の共有、確定申告のサポート、運輸局申請のサポート、そして同じ志を持つ仲間とのつながりが得られます。売り込みや批判のない安心できる場所で、起業の不安を一つずつ解消していきたい方は、ぜひ一度のぞいてみてください。
▶ ねっとオンラインサロンの詳細はこちら:https://netto.life/nettowork
また、介護タクシーの申請書類作成をサポートするWebアプリ「カイタク」も、現在ベータ版を希望者に配布しています。実際に開業を経験した理学療法士が開発した当事者発のツールで、書類の自動生成やAI添削機能を備えています。
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