「借金は怖い」は家計の発想——個人事業主こそ知っておきたいお金の借り方

理学療法士(PT)として独立し、個人事業主として介護タクシー、自費リハビリ、暮らし支援を提供しています。開業2年目に経験した「お金の価値観が変わった出来事」をきっかけに、事業者にとっての借入の考え方をまとめました。

目次

車を一台増やす話になったとき

開業して2年目の頃、利用者が増えてきたため、車両をもう一台増やそうという話になりました。

そのとき、手元に少し余裕資金があったので「現金で買えばいいか」と思っていました。ローンや借入を組む手間もなく、金利もかからないため、自分の中では「合理的な判断」だと感じていました。

ところが、コミュニティの仲間(同じく個人事業主として医療介護分野で活動している先輩)に相談したところ、こう言われました。

「現金はできるだけ手元に残しておいた方がいい。借りられるなら借りた方がいいよ。」

そのとき自分が持っていた価値観

正直、最初はピンときませんでした。

「借金」に対して、なんとなく怖いイメージを抱いていました。返せなかったらどうしよう、利息がもったいない、借金がある状態は不健全——そういう感覚です。

思い返せば、それは「家計の発想」でした。家庭では確かに、借金はないに越したことはありません。住宅ローンも早く返した方がいい、カードローンは使わない方がいい。そういった感覚は一般的ですし、間違ってもいません。

しかし、事業の話になると、それが必ずしも正しくないことを、そのとき初めて実感しました。

事業において一番怖いのは「現金がないこと」

仲間が教えてくれたのは、事業を続ける上でキャッシュ(手元の現金)がいかに重要かということでした。

たとえば、急な修理費が必要になったとき、利用者が一時的に減って売上が落ちたとき、新しいサービスを始めるために先行投資が必要なとき——こういった場面で「手元に現金がない」状態になると、事業が止まります。最悪の場合、黒字でも倒産する(いわゆる「黒字倒産」)という事態にもなりかねません。

逆に言えば、現金さえあれば、多少の波があっても事業は続けられます。車両購入に現金をすべて使ってしまうと、その後何か起きたときに余力がなくなります。だから「借りられるなら借りる、現金は手元に」という発想になるわけです。

実際に日本政策金融公庫から借入しました

仲間のアドバイスを受け、日本政策金融公庫(政策公庫)に相談し、車両購入費用を融資してもらうことにしました。

日本政策金融公庫は、国が運営する政府系金融機関で、中小企業・個人事業主向けの融資が充実しています。民間銀行に比べて金利が低く、開業間もない個人事業主でも審査が通りやすいとされています。(参考:日本政策金融公庫

実際に借入してみると、手続きは思ったほど複雑ではなく、担当者も丁寧に対応してくれました。「借金をした」という感覚より「事業の資金を調達した」という感覚に近かったです。

本が教えてくれた「借りたら返すな」の意味

この経験と前後して、大久保圭太著『借りたら返すな! いちばん得する! 儲かる会社に変わるお金の借り方・残し方』(ダイヤモンド社、2017年)を読みました。

タイトルだけ見ると過激に聞こえますが、本の主旨はこうです。「借りたお金を手元に置いたまま運用・事業投資することが大切で、急いで返済してキャッシュを減らすことの方がリスクが高い。返済は計画的に、余剰キャッシュは手元に残せ」というものです。

つまり「返すな」は「絶対に返すな」ではなく、「余裕があるからといってすぐ繰り上げ返済してキャッシュをゼロにするな」という意味です。本書ではこの考え方を「財務の安全弁としてのキャッシュ」という文脈で説明しており、手元キャッシュを厚く保つことが経営の安定につながると強調しています。

自分が仲間から言われたこととまったく同じことが書いてあり、大きく納得しました。

個人事業主だからこそ意識したいこと

法人であれば、こうしたお金の知識は税理士や顧問が教えてくれることが多いです。しかし、個人事業主は一人です。知らなければ知らないまま、家計の発想で事業を動かしてしまいます。

「借金は悪いこと」という感覚は、家庭では合理的です。しかし、事業では借入はリスクヘッジの手段になりえます。この発想の転換が、開業してしばらく経った自分には必要でした。まだ完全に安定しているとは言えない状況だからこそ、手元キャッシュを守る意識は今も大切にしています。

まとめ:事業のお金の考え方チェックリスト

  • 「借金=悪」ではなく「キャッシュが尽きること=最大のリスク」と考える
  • 手元に余裕があるからといって、すぐ現金で購入や繰り上げ返済しない
  • 政策金融公庫など、個人事業主向けの低金利融資を選択肢に入れる
  • 借入の目的と返済計画を明確にした上で、計画的に活用する

同じような経験をした方、またはお金の考え方で気づきがあった方はぜひコメントやDMで教えてください。

なお、私が開業前から参加している医療介護専門職向けの起業支援コミュニティ「ねっと」では、こうした事業運営のリアルな経験談を仲間と共有しながら学べる環境が整っています。個人で起業を考えている方は、ぜひのぞいてみてください。

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