高齢者が『外出』をやめてしまう前に──フレイルと社会参加の深い関係

「最近、外に出るのが面倒になってきた」

そのひと言を、患者さんやご利用者から聞いたことはありませんか。

医療従事者であれば、その言葉の裏にある意味を、おそらく直感的に感じ取っているはずです。単なる気分の問題ではなく、身体と心の両方に関わる、深刻なサインかもしれないと。

この記事では、高齢者の「外出をやめる」という行動と、フレイル(※後述)の関係について整理しながら、私が個人事業主として介護タクシーと自費高齢者支援を運営するなかで実際に目にしてきた現場の話をお伝えします。開業を考えている医療従事者の方に、少しでもイメージが伝わればうれしいです。

目次

フレイルとは何か──「元気」と「要介護」のあいだにある状態

まず言葉の整理から始めます。

フレイルとは、加齢によって心身の活力が低下し、生活機能が障害されやすくなった状態のことです。日本語では「虚弱」と訳されることもあります。完全に健康な状態と、介護が必要な状態のちょうど中間に位置する、いわば「黄信号」の段階です。

フレイルの評価にはいくつかの基準がありますが、代表的なものとして以下の5つの要素が挙げられます。

① 体重の減少(意図しない体重減少)
② 疲れやすさ(倦怠感)
③ 身体活動量の低下
④ 歩行速度の低下
⑤ 握力の低下

このうち3つ以上が当てはまるとフレイルと判定され、1〜2つの場合は「プレフレイル(フレイル予備軍)」とされます。

重要なのは、フレイルは不可逆ではないという点です。適切な介入があれば、健康な状態に戻ることができます。だからこそ、早期に気づいて支援することが大切なのです。

「外出しない」がフレイルを加速させる仕組み

外出の減少とフレイルの関係は、一方通行ではありません。双方向に影響し合う「悪循環」が存在します。

たとえば、足腰が弱くなってきた高齢者が「転ぶのが怖い」と感じ、外出を控えるようになったとします。外出しなくなると歩く機会が減り、筋力はさらに低下します。筋力が落ちると、今度は家のなかでも動くことが億劫になり、食欲も落ちてきます。食事量が減れば栄養状態が悪化し、体力はさらに落ちていく……。

この悪循環を「フレイルサイクル」と呼ぶことがあります。外出を控えるという、ある意味では「安全のための選択」が、実は身体機能の低下を加速させてしまうというのは、医療従事者の方にとっては馴染みのある話かもしれません。

しかしここで見落とされがちなのが、「社会参加」の喪失という側面です。

外出が失われるということは、「つながり」が失われるということ

外出には、身体的な活動という意味以上の価値があります。

近所のスーパーへの買い物、通院、友人との食事、趣味のサークル活動、孫の運動会——これらはすべて「社会参加」です。人と会い、言葉を交わし、自分が社会の一員であると感じる機会です。

外出ができなくなると、こうした社会とのつながりが一気に細くなります。孤独感が増し、気分が落ち込みやすくなる。認知機能の低下リスクも上がる。食事を作る気力も失われてくる。身体的なフレイルと精神的な変化が、互いを引き起こし合っていきます。

私が実際に支援したあるご利用者のことを少しお話しします。

80代の女性で、もともとはとても社交的な方でした。月に何度か友人と集まってお茶を飲むのが楽しみで、それを生きがいにしていたそうです。ところが骨折をきっかけに外出が困難になり、しばらくして「もう出かけなくていい」とおっしゃるようになりました。

ご家族から連絡をいただき、介護タクシーで友人宅までお送りするお手伝いを始めたのですが、最初の外出のとき、車のなかでずっと黙っていたその方が、友人の顔を見た瞬間に声を上げて泣かれたのです。

「また会えた」という言葉が忘れられません。

外出の支援は、移動の支援ではありませんでした。その方にとっては、社会との接点を取り戻す瞬間だったのだと、あとになってから深く実感しました。

開業前に感じていた「本当にできるのか」という不安

こうした話を聞いて、「自分もそういう仕事がしたい」と思っていただけたなら、うれしいです。でも同時に、こんな不安も浮かんでくるのではないでしょうか。

「介護タクシーってどうやって開業するの?」
「二種免許が必要と聞いたけど、取れるのかな」
「行政書士に頼まないといけないの?費用はどれくらい?」
「契約書や書類って何を使えばいいの?」
「一人でやっていけるのか、そもそも収入になるの?」

私自身も、開業前はこうした疑問と不安でいっぱいでした。医療の現場で働いてきた経験はあっても、事業を立ち上げるということはまったく別の話です。申請書類の書き方も、契約書の作り方も、確定申告のことも、何もわかっていませんでした。

そのとき出会ったのが、「ねっと」というコミュニティです。

「ねっと」との出会い──開業前に知れてよかった

ねっとは、高齢化率日本トップクラスの山口県・周防大島(すおうおおしま)で生まれた「暮らし支援サービスねっと」の起業支援コミュニティです。2021年秋からクローズドな形で運営されており、介護福祉士・看護師・理学療法士・作業療法士・言語聴覚士など、医療介護の専門職を持つ個人が在宅支援や介護タクシー事業の起業を目指すための場所です。

私がこのコミュニティを知ったのは、開業を決意する前の段階でした。そのタイミングで知れたことが、本当によかったと思っています。

ねっとでできることのひとつは、契約書や広告素材などの共通ツールを使えること。契約書はかなめ法律事務所が監修した法律対応済みのものが用意されているので、ゼロから作る必要がありません。また、青色申告や確定申告の知識を経理サポートとして学べる環境もあります。

行政書士に頼まず、自力で介護タクシーの申請を進められるようなサポートも充実しています。二種免許の取得から運輸局への申請フローまで、先輩事業者の経験を参考にしながら進めることができます。

何より大きかったのは、「批判なし、励まし合い」の環境があったことです。個人で起業するというのは、想像以上に孤独な作業です。うまくいかないことを誰かに相談できる場所があるというだけで、心の余裕がまったく違います。

申請書類の不安を和らげるツール「カイタク」

ねっとを通じて知ったものの中に、「カイタク」というWebアプリがあります。

カイタクは、介護タクシー(福祉車両限定の旅客自動車運送事業)の開業を目指す人向けに作られた書類サポートツールで、現在開発中のアプリです。ベータ版を希望者に配布している段階ですが、その内容はすでに実用的なものになっています。

主な機能は、必要書類リストの自動生成、AI書類添削・不備チェック、修正ポイントのわかりやすい解説などです。開発者は理学療法士として病院に勤務したあと、2023年に自身で介護タクシー事業を開業した方で、実際の申請経験をもとに作られた「当事者発」のツールという点が信頼できます。

書類の不備で申請が通らない、どこを直せばいいかわからない——そういった困りごとは、開業前の多くの人が経験することです。そこを丁寧にサポートしてくれる仕組みが、個人開発で生まれているというのは、とても心強いことだと感じています。

外出を支えることが、フレイルを防ぐことになる

話を最初に戻します。

高齢者が「外出をやめてしまう前に」できることは何か。医療の現場では、リハビリや栄養指導、社会参加の促しといったアプローチが取られます。でも、退院後の生活、病院の外の世界では、それを支える仕組みがまだ十分ではありません。

介護タクシーや自費高齢者支援という仕事は、その隙間を埋める可能性を持っています。公的保険の枠では対応しきれないニーズに、専門的な知識と経験を持つ個人が関わっていく。それは、医療従事者にしかできない支援のかたちです。

開業に向けて動き出す前に、仲間の存在を知っておくことは、大きな力になります。ねっとというコミュニティは、その入口のひとつかもしれません。

気になった方は、まずのぞいてみてください。

▶ ねっと公式サイト:https://netto.life/
▶ オンラインサロン(ねっとわーく):https://netto.life/nettowork
▶ カイタク(書類サポートアプリ・ベータ版):https://luxury-meerkat-a0e444.netlify.app/

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