「施設に入ってからリハビリがなくなり、寝たきりになってしまった。週2回でも運動をしたい」——2年ほど前、そんな相談が届きました。在宅で訪問リハビリを利用していた方が、施設入所を機にリハビリを受けられなくなってしまったケースです。このご相談をきっかけに、リハビリの意味について改めて深く考えるようになりました。
寝たきりからの離床——小さな変化が生む大きなループ

相談を受け、週2回のリハビリを開始しました。最初は寝たきりの状態で、少し起き上がるだけで血圧が下がってしまい、まともに離床できない状況でした。
それでもバイタル管理をしながら離床訓練を続けることで、徐々に離床時間が増えていきました。当初はリクライニング車椅子で二人がかりの移乗が必要でしたが、やがて通常タイプの車椅子で一人介助での離床ができるようになりました。
介助量が軽減するということは、離床の難易度が下がることを意味します。離床の難易度が下がれば離床の機会が増え、結果として体力の向上にもつながります。起きている時間が増えればリハビリの内容も広がっていく——こうした良いループが生まれるのです。
そして現在、この方は月に1回ほどタクシーサービスを利用して、ご家族と外出を楽しめるようになりました。
離床時間を増やすことの意義——エビデンスが示すもの
長時間の臥床は、高齢者において下肢筋力・筋パワー・有酸素能力を急速に低下させます。健康な高齢者を対象にしたベッドレスト研究では、わずか10日間の臥床でこれらの機能が低下することが示されています。離床時間を増やすことは、単なる活動量アップではなく、廃用による身体機能低下への対抗策として重要な意味を持ちます。
また、要介護高齢者を対象とした研究では、4時間以上の離床が四肢骨格筋量と摂食嚥下機能に、6時間以上の離床が体幹筋量にも関連することが報告されています。臨床的な目安として、まずは食事を車椅子上で行うことから始め、段階的に離床時間を延ばしていくアプローチが提案されています。
ただし、重要なのは「長く座らせるだけ」では十分でないという点です。離床時間の中に立ち上がり・歩行・生活動作・役割活動を組み込んでいくことで、より大きな効果が期待できます。離床とは、ベッドから出るだけでなく、臥床中心の生活から「動く生活」へ移行することそのものなのです。
機能訓練の先にあるものを見据える
在宅・生活の場で働くようになって初めて、利用者さんの生活そのもの、人生そのものに触れることができるようになりました。そこで強く感じたのは、機能訓練だけがリハビリではないということです。
思い出の場所に行く。好きなものを買いに行く。見たかった景色を見に行く。機能訓練の先にある「その人らしい生活」を常に見据えること——それこそが、私たちが忘れてはならない視点だと思っています。
私の事業所”netto岩国”では、こうした「生活の場でのリハビリ」を大切にしながら、一人ひとりの利用者さんの生活と人生に寄り添う支援を続けています。

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